海に生育する「かいそう」を漢字にすると「海藻」と「海草」のどちらが正しいのでしょうか? 「海藻」と「海草」とは厳密に言えばそれぞれ別の物を指しています。
我々が普段食べている,海苔,昆布,ワカメ,ヒジキには「海藻」という漢字が当てはまります。「海藻」は日本人には非常になじみ深く,また日本人ほど多くの種類の「海藻」を食用としている民族は世界的に少ないようです。
一般的に「海藻」の方は,根・茎・葉のような形態があっても,それらは機能的には分化していません。また,“陸上植物”と同様に「植物」として扱われることがありますが,“陸上植物”とは全く異なった生物群です。日本に産する海藻は約1400種類知られています。
一方「海草」の方は“陸上植物”の仲間で,根・茎・葉の機能分化をし,花を咲かせるグループである種子植物の単子葉類で,ほとんど食用としては利用される事はありません。海草は日本国内で20種程度が知られています。
海域の沿岸部ではこの「海藻」と「海草」とは,ともに密に生育して“藻場”を形成します。“藻場”は沿岸域の主要な一次生産者として,水産上重要な魚介類を含む多様な海産動物類の産卵・発育の場として,水質浄化の担い手として,重要な機能を果たしています。近年,日本沿岸では様々な原因によって,この“藻場”が消滅,減少し,社会問題となっています。
余談ですが,この「海藻」と「海草」は同じ発音のままでは紛らわしいため,現場では「海藻」は「かいそう」,「海草」は「うみくさ」と呼んでいます。